
いよいよ平成が終わって令和が始まりますが、残念ながらこのまま行くと、日本に明るい未来はやって来ないでしょう。
こんな予想はハズれたほうがいいに決まっていますが、いろいろなシミュレーションをしてみても、日本経済が悪くなる以外の方向性は見えません。
ただ、誤解がないように言っておくと、これは日本全体の話です。そんな中でも個人一人ひとりは、いくらでも幸せに生きられます。
近刊『このままだと、日本に未来はないよね。』では、これから日本がどんなふうにヤバくなるのか、
沈みゆく日本で生き抜くためにはどうしたらいいのかをまとめました。最終回の後編では、“オワコン日本”で「おいしく」生きるための幸福論をお届します。
「1億人を幸せに」はムリだけど、個人にはいい時代
これから日本全体をよくするのは難しいと思います。日本全体をほかの国と比較して相対的に高い位置に持っていきたいのであれば、
政治的なものが変わらなければ不可能でしょう。
ただ、個人一人ひとりが楽しく過ごしながら生き残る方法は、あると思います。
「自分の親戚や知り合いなど100人ぐらいを幸せにします」はできると思うんです。自分で会社をつくって従業員として雇うとか、やりようはいろいろあるんですが、
「1億人全員を幸せにしよう」は、もう無理でしょう。
実際、一人ひとりの生活は、昔よりもかなり自由になってきている気がします。
例えば、90年代に1人でそれなりに便利に暮らしていた人は、クルマやコンポ、ゲーム機など、いろいろなものを買っていました。
だから、ふつうのサラリーマンが生活するだけでも、けっこうお金が必要だったんです。
でも今は、身の回りの電子機器はスマホ1台で済むようになったので、
お金がない人とお金がある人で持っているものは、あまり変わらなくなってきました。昔はクルマを持っていることはステータスでしたが
、今、東京に住んでいる金持ちでもクルマを持たない人が増えましたよね。むしろ、かつて金持ちしか買えなかったものを、庶民が買えるようになりました。
金持ちと庶民のできることが変わらなくなった
実際に金持ちの暮らしを見ても、スマホがあって同じゲームをしていたりするので、貧乏な人との差がなくなってきているんですよね。
そういう意味では、個人にとってはいい時代だと思います。ただ、ビジネスでは日本は全然儲(もう)からなくなってきているという話です。
結局、たくさんのお金を手に入れても、金持ちができることとふつうの人ができることって、今はそんなに変わらないので。
今の時代に金持ちしかできないことって、食べ物にお金をかけることぐらいかもしれません。
でも、10倍のお金を払った料理が10倍おいしいかと言えば、大して味は変わりません。
違いがあるとすれば、金持ちは海外旅行などにお金を使うことが増えてきていることぐらいですかね。
みんなが知っている有名な観光地に行くのではなく、その国でしかできない体験にお金を使ったり。
でも、「アマゾンで川下りしてきて、超楽しかった」と言われても、「へぇ、そうなんだ」くらいの話ですからね。お金のない人が、別にうらやましがることでもないんです。
他人とズレていたほうが競争率は低い
僕が個人的に好きなものは、だいたい世間に理解されないまま廃れていくんです。映画でもマンガでも、僕が「これは面白い!」と思った作品は売れないんですよね。
『ドラゴンボール』や『ワンピース』とかは、それなりに面白いんですが、「すげえ面白い」というよりも「まぁ売れるよね」と思います。
だから、僕がまったく興味がないもののほうが当たる確率は高くて、基本的に僕が気に入るとマズイ経験が多いんです。
僕は多くの人が考える平均的な考えができないので、一般大衆に向けて発信するときは、自分の思考をなるべく基準にしないようにしています。
第三者がどう言っているのかをつなぎ合わせて、「統計的にある程度こんな感じだろうな」と考えるようにしています。キャラが萌え系でかわいいとかは、僕にとってはむしろマイナス要素なんですけど、ただ「そういうのがあるほうが売れるだろうな」などと要素として見ています。
でも、ビジネスに関しては、逆に僕の考え方のほうが正解の気がしています。
例えば、みんなが「これうまくいくよね」と思っているものは、すでに誰かが出していたり、出そうとする会社があったりするので、競争状態になりがちです。
逆に、誰も興味がないニッチなものは、競争相手がいないまま伸びる可能性があります。
単月利益さえ出るようになれば、継続していけば伸びていくので、ビジネスは人とズレていたほうが安全だと思っています。
ニコニコ動画や2ちゃんねるも、そんなに多くの人が興味を持っているわけではなかったけれど、ニッチ的に「これ、面白いね」という人が出て少しずつ伸びるというビジネスモデルです。
これはビジネスだけにかぎりません。ストライクゾーンは広いほうが、他人とズレていたほうが、人生は幸せなんです。
趣味や嗜好は他人と違うほうが幸せになれます。みんなと同じ趣味を持つと、それだけ競争率が高くなるので、幸せになれる確率が減ってしまいます。
お金と幸せの関係
いまだに「お金さえあれば幸せだ」と思い込んでいる人がいるようですが、お金と幸せって関連していません。僕はお金がなかった子どもの頃からそう思っているのですが、実際、幸せと収入の関係を調べた調査はいろいろとあります。
例えば、ノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学の心理学者ダニエル・カーネマン名誉教授の研究によれば、年収7万5000ドル(約820万円)までは幸せと収入が比例します。これは、食べ物など最低限の衣食住が満たされないとなかなか幸せだと感じられないからでしょう。
でも、年収7万5000ドルを超えると、幸福度と収入はあまり比例しなくなります。
それぞれの国の経済状況や文化によって分岐点は違うと思うのですが、おそらく日本だと400万円くらいから変わらなくなると思います。
あとは、その人がどれくらいお金を使いたいかによりますよね。お金を使わないと幸せになれない人よりも、
お金を使わなくても幸せになれる人のほうが人生はラクだと思います。
快楽は手軽に感じられるほうが幸せになりやすいので、例えばブランド品を買うのが幸せだと思う人は、ユニクロの服では幸せを感じられないという意味で、幸せになれる度合いが少ないんです。
「人と比べない幸せ」が人生をラクにする
そもそも幸せは、相対的ではなく絶対的なものなので、収入や職業では決まりません。自分より下を見て幸せを感じられるかもしれませんが、
上を見ても幸せは感じられないです。だから、上を見て比較してしまう性格や考え方は、人生にとって害悪でしかありません。上を見るクセのある人はやめたほうがいいでしょう。
人はつい意味のない比較をしてしまうんですが、何かと比べて自分が不幸であると思うことに意味はないし、むしろマイナスです。
比較は、価値観において意味がないんです。だから、人と比較しないで幸せだなって感じられるものを見つけたほうが、人生で楽しい時間は長くなります。
最近の若い子に欲しいものを聞くと、「フォロワー」って答えが返ってきます。フォロワーはTwitter上の数字にすぎないのですが、逆に言えばその数字を上げるだけで人間は幸せになれるんです。そのぐらい人間は簡単に幸せを感じられるものなんです。
どんなに恵まれた人でも自分が不幸だと思えば不幸になれるので、毎日楽しく暮らしていると思っているかどうかという、気の持ちようの気がします。
歴史的にはそれは宗教によって得られたりしてきたと思うのですが、今ならVR的なエンターテインメントとかで幸せを感じる人もいれば、
マンガを読んだり映画を見たりして感じる人もいると思うので、じつは生きづらさを解決するものは世の中にいっぱいあると思います。
無料のものから有料のものまで、いろいろ試したら、何か自分が幸せに感じるものに出合えるんじゃないでしょうか。